【書籍】聖刻1092
あ の 朝 日 ソ ノ ラ マ が 店 を た た む 。 先月、友人のナカタニさん から聞いたニュースに、栄枯盛衰の悲しみを感じた。朝日ソノラマ と言えば、高千穂遥『クラッシャー・ジョウ』や『ダーティ・ペア』、菊池秀行『吸血鬼ハンター“D”』、夢枕獏『キマイラ・吼』、そして千葉暁『聖刻1092』といった、当時の読書好きな小中学生が必ず通る道の一つであった(角川スニーカー文庫の先輩格である)。 最近は今市子『百鬼夜行抄』を読んでいたのだが、その出版社が消えるというのは何だか少し、切ない。 ********************************************************************** さて、今回紹介する作品、『聖刻1092』の舞台はアハーン大陸。神秘の力「聖刻(ワース)」が眠る大地。 聖刻石を然るべき配置に並べた仮面(ペルソナ)を用いて超自然的な力「練法」を操る「練法師」が歴史の裏に暗躍し、やはり仮面の力で動く巨大な人型のからくり人形「操兵」が軍事力として使用されている世界。 中原にある村カロウナに暮らす修行僧、悪たれフェンは、父の遺した老操兵「ニキ・ヴァシュマール」を駆って外の世界に飛び出す事ばかり夢想する少年である。 人間離れした頑強な肉体を持ち、欲望のままに行動するフェンに、ほのかな想いを寄せるリムリア。二人は喧嘩しながらも仲睦まじく暮らしていた。 しかし、《蒼狼鬼》ガシュガル・メヒム率いるグルーンワルズ傭兵団の操兵隊が現れ、村を蹂躙し、リムリアを拉致する事件が起こる。 フェンは怒りに燃え、ヴァシュマールで迎え撃つが、ガシュガルの操兵の操る《気闘法》の前になす術もなく倒されてしまう。 数日後、回復したフェンは、リムリアの養父でソーブン寺の管長ハラハ・ヴァルマーから、リムリア奪回を託され、ヴァシュマールと共に旅立つ。 フェンは旅を続ける中で、自称“カグラ一の占い師”ジュレ・ミィやダマスタの美しい剣士クリシュナ・ラプトゥ、豪放たる聖騎士ガルン・ストラといった仲間と出逢い、やがて練法師たちの組織《聖華八門》、そして《八の聖刻》に絡んだ巨大な陰謀に巻き込まれて行く。 物語の魅力の大半は操兵にある。 操兵には三種類あり、それぞれ《狩猟機》、《呪操兵》、《従兵機》と呼ばれている。 狩猟機は騎士が乗る操兵で、鎧を身に纏った武者の様な姿をしている。武器戦闘が主な役割で、国家においては主な軍事力として扱われている(個人で所有出来るほど安価では無い)。 呪操兵は練法師が乗る操兵で、奇妙な姿(腕が複数ついてたり、左右非対称だったり)をしている。練法を使う為の仕掛けが施されている。格闘には不向きな機体がほとんどだが、中には例外的に格闘を得意とするものもある。 従兵機は下位機種で、首が無く、胸にあたる部分に仮面がついている無骨なデザインのものが多い。兵士用の機体で複数人が乗れるものも多い。 操兵は操縦者である操手と仮面の相性が合わないと、動かせない。 その為、あたかも生き物に接するかのような描写も多く見られる。 これは聖刻世界を舞台としたTRPG 『WARES BLADE』においてもルール化されており、ダイスの目が悪ければうんともすんとも言わなかったり、転倒してしまう事もある。 操兵の操縦は難しい。 千葉氏の操兵の描写は、躍動感すら感じられる。 質感や動きなどが緻密に描かれ、実際に操兵があったらこんな感じなんだろうな、というイメージがしやすい。 そして、壮大で豪快な作風で読んでてワクワクしてくる。 いわゆる「血沸き肉躍る」冒険活劇という感じなのだ。 男の子の世界である。 文庫版は絶版だが、加筆修正した新書版として復刊されているので、興味がある人は是非、呼んでもらいたい。 ********************************************************************** ソノラマ関係で最後にもう一つ。 子供の頃、雑誌の付録に「ソノシート」ってペラッペラのレコードみたいのがついてた。 この「ソノシート」、朝日ソノラマの商標らしい。 知らなかった。 ソノシートはレコードの衰退と運命を共にした訳だが、最後にプレスされた作品名がヤバいwwwwwwwwwwwwww ザ・スターリン「電動こけし/肉」 てwwwwwwwwwww ちょwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwww ※ザ・スターリンのソノシートは、朝日ソノラマとは全く関係がありません。
【書籍】MMR マガジンミステリー調査班
知る人ぞ知るトンデモ漫画の決定版、石垣ゆうき『MMR マガジンミステリー調査班』が色んな意味で大好きである。 小学生の頃、母方の実家に行くと、ジャンプ、サンデー、マガジンといった漫画雑誌がゴマンとあった。 祖父がオイラたちが喜ぶだろうと、用意してくれていたのだ。おかげで漫画三昧の日々を送り、立派なオタクに成長した訳だが、数ある漫画の中でオイラの心を掴んで離さなかったのは、石垣ゆうき『MMR』である。 キバヤシという講談社 の編集者が、同僚のナワヤ、イケダ、タナカ、トマルといった面々と「マガジンミステリー調査班」としてオカルトの謎に迫る、という内容なのだが、そのハチャメチャ振りがヤバい。 初期はUFO目撃談やキャトルミューティレーション、ミステリーサークルといった話題が多かったが、途中ノストラダムスの大予言を扱ってから、作品の端々にやたらとノストラダムスが出てくるようになった。 また、その辺りからやたらと超国家陰謀論を主張したり、最終戦争や未知のウィルスや宇宙線などによる全人類の滅亡などを力説し、数多くの純真な少年少女を絶望のどん底に叩き込んだ。 本人たちは至って真剣だが、やってる事は無駄に不安を煽る事で、むしろトラブルメーカーである。 また、前後の繋がりを無理やりまとめてしまうキバヤシの断言がこの作品世界での絶対的なルールであり、問答無用で効果を発揮する。 「たった一人の人間の狂気が引き起こす…それが戦争なんだよ!!」 「ヒトラーの末裔たちは大地の気を操ることで、“異常気象”を起こそうとしているんだ!!」 「ジャンクDNAが人類のコントロールを超えて暴走し……人類は精神と肉体の暴発を起こしてしまうんだ!!」 「サブリミナルのバーコード信号をキャッチし、それを中継して……人間の脳に電気的刺激を与えるもの――それがナノロボットだよ!!」 などと言われれば、その場の全員は 「な…何だってー!?」 と驚愕の表情を浮かべる。 もちろん、ナワヤ辺りから反対意見も飛び出すが、暴走を始めたキバヤシの意見はもうどうにも止まらない。 気がつけばキバヤシの言った言葉が作品の真理になっており、彼が何かを言う度、作品はカオス具合を増していく。 根拠もへったくれもなく、作品全編がツッコミ所で構成されており、非常におかしくて笑える。 是非、漫画喫茶や古本屋で見かけたら読んでみて欲しい作品である。 類似作品に小学館 『ワンダーライフ』に連載されていた、あすかあきお『ショックサイエンス』などがある。
【書籍】デジタル・デビル・ストーリー 女神転生
小学生の頃、西谷史 氏の小説『デジタルデビルストーリー』シリーズにハマっていた。 一巻『女神転生』はアニメ、さらにはnamco からファミコンソフト化され、後にアトラス の人気ソフト『真・女神転生(通称・メガテン)』シリーズの原作となった。 メガテンを御存知の方は周知の事だが、ゲームの魅力は何と言っても「悪魔召喚」である(メガテンでは登場モンスターを全て悪魔と呼ぶ)。 主人公が契約した悪魔は、コンピューターの「悪魔召喚プログラム」によって召喚、戦闘に参加させる事が出来る。 小説では、コンピューター理論と魔術理論が酷似している事に気づいた主人公・中島(イザナギが現世に転生した姿)が作成したプログラムで、これにより世界に悪魔が放たれてしまう。 中島は弓子(イザナミが現世に転生した姿)と恋に落ち、悪魔たちと戦うが、「悪魔を呼び出した犯罪者」として社会から糾弾され、中島は精神異常をきたし、覚醒したイザナミの手によって殺される。 何かが現世に転生する、という話が西谷史の特徴的な作風なのだが、主人公がダークヒーローというのも面白かった。 また、日本神話のイザナギが悪魔召喚プログラムを作ってギリシャ神話に出てくる魔獣ケルベロスを召喚して使役したり、北欧神話のロキと戦ったり、と世界中の神話からエッセンスを抽出した作品作りが魅力的であった。 ゲームでもこれは活かされており、インドのディーヴァ神族やキリスト教の天使たち、中南米の神々やエジプトの神々、果ては都市伝説に至るまで、あらゆる出自の神々、モンスターを集結させている。 ゲーム攻略本では、悪魔絵師として名高い金子一馬氏の手による原画に、かなりマニアックな説明文が載っており、オイラの如き神話・伝承オタクには堪らないものとなっている。 アトラスの看板ゲームとなって久しいが、小説は絶版になっていた。 しかし、著者が全面的な改稿を施した『愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生』がブッキングより2年前に復刊されている。 ゲームは知ってるけど、原作は知らなかった人も多いと思う。 この機会に読んでみてはどうだろうか?
【書籍】指輪物語
J.R.R.トールキン の未完の遺稿を元に、息子のクリストファー・トールキンが完成させた『The Children of Húrin(フーリンの子供たち)』が欧米では発売されている。 和訳を心待ちにしてるところなんだけど、一部は『終わらざりし物語』に収録されている。映画『THE LORD OF THE RINGS』 の成功で、再びファンタジー界に活気が戻ったが、「ホビット」とか「エルフ」とか「オーク鬼」なんていう単語が普通に通用する今こそ、TRPGもガンガン普及して欲しいところ(ついでに欲を言えば、ホビージャパン さん、『指輪物語ロールプレイング』を復活して下さい)。 オイラと『指輪物語』との出逢いは20年くらい前。 当時、小学校の同級生の家に遊びに行ったら、ラルフ・バクシのアニメ版『指輪物語』を観ていて、その世界観にすっかりヤラれてしまい、父親に頼んで原作小説『旅の仲間』を買ってきて貰った。 アニメ版は実写をまず撮影し、セルを描くという手間のかかる手法だったが、予算の都合で途中ところどころ実写になる。 その為、ボロクソに扱き下ろされる事も多い迷作なのだが、オイラ的には逆に黒の乗り手やオーク鬼の不気味さが表現されてて好きなのだ。 ピーター・ジャクソン監督はこのアニメのファンだったらしく、同じ構図が結構たくさん出てくる。 原作小説の日本語訳は瀬田貞二さん。『三びきやぎのがらがらどん』や『ナルニア国ものがたり』の翻訳家としても知られている方である。 瀬田貞二さんの訳は独特の優しさや可愛らしさがあって好きだ。 「Sting」を「つらぬき丸」と訳したり、「Strider」を「馳夫」と訳したりしてて面白い。 あえて日本語臭くしたのには理由がある。 指輪物語という世界は言語が重要な役割を果たしている為(「モリアの坑道」をドワーフ語では「カザド=ドゥム」と呼ぶように、一つの物事に対して複数の言語による呼び名が存在する)、極力物語の登場人物のつもりになって、英語で書かれたものは日本語に置き換えるように勤めたという。 例えば、ガンダルフの剣は「グラムドリング(敵を砕くもの)」という名前だが、これはエルフ語なのでカタカナ表記である。 物語の中の人物にとって聴き慣れない言葉はカタカナ表記、日常語は日本語として翻訳されているのである。 こういう語感に気を使った訳というのは、物語に忠実で嬉しい。 映画ではかなりカットされているが、この作品、とにかく歌が多い。登場人物が何かにつけて唄うのだ。 映画を観た時、やや暗過ぎるイメージを持ったのだが、歌が少ないと感じたからかも知れない。トム・ボンバディルも出て来ないし。 原作小説はとにかくやたら長いので、一気に読む事をお薦めしたい。 かく言うオイラも何度挫折したかわからないのでw 先に映画を観てから読むと、ヴィジュアル面で「あ、ここはあの場面だな」と補完しながら楽しめるかも知れない。
【書籍】ロードス島戦記
D&D の紹介記事 として世に出た『ロードス島戦記』だったが、元は作者の水野良氏が学生時代から暖めてきた世界で、漫画や小説の形で書き溜めていたそうだ。 その世界を舞台にTRPG を遊ぶようになり、ゲームのルールによってよりリアリティのある設定が生まれていった。 J.R.R.トールキンは元々言語学者で、オックスフォード大学の教授だが、『指輪物語』 を書くにあたり、世界を構築する事から始めたという。 中つ国(Middle Earth)の成り立ちや、各種族や地方毎の言語などを作り、地盤を固めた。 だから『指輪物語』は単なる御伽噺に終わらず、血の通ったもう一つの世界を創造する事に成功したのである。 それと同じく、『ロードス島戦記』は世界観に加え、TRPGのルールという縛りによって、リアリティを与えられている。 しかも、キャラクターは自分以外のプレイヤーが動かす為、想定外の行動を取る事も多々ある。 そうしたプレイを重ねて描かれたロードス島戦記は、やはり血の通ったリアリティを持っている。 辺境の村ザクソンの若者パーンが、様々な戦いを経て、一人前の男に、そしてどの王国にも属さない孤高の英雄、ロードスの騎士の称号を得るまでの物語である。 途中、「パーンのレベルが上がり過ぎて」小説の主人公としては使いづらくなり、駆け出しキャラのスパークに主人公の座を明け渡すが、基本的にはパーンを軸に話が展開していく。 時には勇者と讃えられ、時には守ってきた村人たちに裏切られ、それでも自分の信じた道を歩き続け、成長を続けるパーンを見ていると勇気づけられる。 ロードス島戦記は、人間の持つ弱さも強さも描いた傑作だと思う。 立場や信念によって、対立し合う人間の愚かさと、迷いながらも守る物を見出した時の人間の強さが巧みに描かれている。 ロードス島戦記には完璧な人間が出てこない。 皆どこか欠けていたりする。 そこをお互いに補いながら、協力する姿に感動を覚える。 熱血騎士パーンはもちろん、威厳よりも人徳で治める傭兵王カシューや優しい狂戦士オルソン、薄幸の騎士スパーク、敵ながら天晴れな暗黒騎士アシュラムなど、魅力的なキャラクターがたくさん登場する。 ファンタジーやRPGが好きで未読の人には、是非とも読んで貰いたい作品の一つである。 『ロードス島戦記』は大きく分けて3つのシリーズとして分類出来る。 パーンたちが参加した英雄戦争からスパークたちが参加した邪神戦争までを描いた『ロードス島戦記』シリーズ、英雄戦争の30年前に六英雄とスカードの王子ナシェルが参加した魔神戦争を描いた『ロードス島伝説』シリーズ、そしてマーモ公となったスパークと邪神カーディスの教団との戦いを描いた『新ロードス島戦記』シリーズである。 また、同時代のアレクラスト大陸を描いた『魔法戦士リウイ』シリーズや、マーモを脱出した暗黒騎士アシュラムたちが流れ着いた大地を舞台とする『クリスタニア』シリーズとも関わりがある。 コンピューターゲームやアニメ、TRPG、漫画、カセットブックなど様々なメディアで登場したが、やはり小説とTRPGを推したい。 小説で興味を持ったら、TRPGで世界観を味わって欲しい。 かつて角川から『ロードス島戦記コンパニオン』と『ロードス島戦記RPG』というTRPGが出ていたが、現在は絶版である。 今、確実に遊べる方法としては、『ソード・ワールドRPG』 と『ロードス島ワールドガイド』を使ったプレイが挙げられる。 『ロードス島ワールドガイド』を使わなくても、基本的に『ソード・ワールドRPG』はロードス島と同じフォーセリアという世界を舞台にしたゲームなので、再現性は高い。 まぁ、ゲームはやらないにせよ、小説は一読の価値があると思う。