ヒグラシの声が聴きたい。
ハルゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシなどセミにも色々あるけれど、一番好きなのは何と言っても、ヒグラシである。
夕暮れの山で、あの物悲しい「カナカナカナカナカナカナ…」という鳴き声を聴くと、えもいわれぬ感動を覚える。
母方の祖父は山男で、暇さえあれば登山をしていた。
オイラはじいちゃんが大好きだったので、いつも遊んで貰っていたが、山より海が好きだったので、一緒に登山をしたのは数えるくらいしかない。
じいちゃんもオイラを溺愛してくれた。
中学の頃、学校の行事で、一泊二日の日程で高尾山に登りに行った事があった。
これは後から祖母に聞いた話だが、この日、じいちゃんは朝からソワソワしてて、
「あいつ、ハンカチ忘れてないかな」
と言いながら家を出てオイラを追い掛けて行ったそうである。
実際、「おう!のりくん!」と突然山でじいちゃんに声をかけられ、非常に驚いた。
さて、そんなじいちゃんと家族で山に登った時、山小屋でヒグラシの声を聴いた。
背の高い木々に取り囲まれて聴いたその鳴き声に、子供ながら感動した。
今聴くと、ヒグラシの鳴き声の美しさに加え、じいちゃんと山小屋で聴いた想い出が蘇り、何だか泣けてくるのである。

